空気時計制作工房

母屋では日記と詩を公開中です。

2006-10-05から1日間の記事一覧

【それ】エピローグ

何人の人を殺めたのだろう 何の理由もなく 何の躊躇もなく その男は必然的に絞首刑 最期の断末魔・・・失われる有 【それ】は呼び声に応える (・・・最悪なる者よ) (・・・なぜ 呼ぶのだ) 「最悪だからだ お前に何も求めないし お前に何も押し付けない」…

【それ】第四章 留まるもの

自己の朽ち果てゆく肉体 そこに留まる魂 魂を留めてさせるものは何? 【それ】は 素朴な疑問を懐いた 自分自身の存在といえぬ存在すら 疑問を懐かぬとゆうのに 肉体とともに 朽ち果てゆく偵察機 南仏マルセイユ沖の水底 「空気のそこでも死は訪れるさ。」 空…

【それ】第三章「名前のないもの」

言葉が言葉になる前の言葉 【それ】は 自分自身を そう感じ続ける 現在も過去も未来も あらゆる空間に あらゆる時間に あらゆる時空に 存在しえながら どの時空にも存続しては いない どの時点かで得たものは どの時点でも保有する【それ】 【それ】は 確か…

【それ】 ■第二章「欠ける有」

かつて自分であったものを 私は食べた かつて人間であったものを 私は食べた そして 私もまた 人間に食われた 私は また 人間として 生まれようとしている 生きとし生けるものの それが 宿業なのか? それにしては 人間は のさばり過ぎ 私は 生まれる 今度は…

第一章「有から生じた無」

「お前は何者だ?」 桜の根元なる一枚岩 一枚岩の上に座す男 【それ】をはじめて認識した者 それは無念無想に至った者 【それ】に近しく 【それ】を求める者「お前は何者だ?」 【それ】の意識に直接 問いかける者 だが 【それ】には その問いに答えるべき …

プロローグ「無から生じた有」

【それ】は生まれた 母もなく 父もなく ゆえに 兄弟もなく 【それ】は生まれた 【それ】は 自分が生まれたという 意識を持ちながらも 刹那にも満たない 実体なき存在といえた ある日 【それ】はふと思った 自分は一体 何者なのかと 時の流れでさえも 【それ…