空気時計制作工房

母屋では日記と詩を公開中です。

SOG120311

「ヨモ大陸編」・・・試作

首の下は土に埋められて
お互いに見合わす四人の男
お互いに顔は知っていても
お互いに知らぬふり

ホーライは不思議な場所
土に埋まっているだけで
怪我も病気も治ってしまう
もとある姿に戻してしまう

ヨモ大陸に四つの国
ホーライを占拠しようと
攻め入ってみても
剣も鎧も盾も朽ちてしまう

ホーライは不思議な場所
ヨモ大陸の中央部
真円を描き ヨードが覆う
ポーター達が暮らす地域

怪我も病気も治すけれど
ものある姿に戻すだけ
若者は若者に 老人は老人に
ものある姿に戻すだけ

体に刻まれた年齢は戻らない
やがては老いさらばえて
衰えて死ぬことに変わりなく
死体を埋めても蘇りはしない

ホーライは硬い土地
硬いハニポリで覆われて
所々にヨードがあって
そこだけ掘り返せる

怪我や病気になると
ヨモ大陸の人々は
ホーライを訪れる
ポーターがヨードに埋めてくれる

フェニク国 タートス国
フォアタ国 ブードラ国
四つの国とひとつの地域
ヨモ大陸は そんな大陸

300年前 北の大陸で
迫害を受けた四つの民族
環をなす岩礁帯を小船で抜けて
辿り着いた未開の大陸

迷路のような岩礁帯を抜けて
それぞれの民族が辿り着き
四本の川が自然と国境となり
四つの国は形をなしていった

ホーライ山を囲む形で
かつては四つの山があった
タイヨ山は海へ滑り落ち
インキョウ山は地中に没した

タイヨ山はフェニクがフォワタへ
インキョウ山はフォワタがフェニクへ
攻め入ろうといた時に
地震と共に消えた

そんな歴史もあった
他国へ攻め入ろうとしたのは
「いにしえの記憶」のせい
ヨモ大陸の伝説のせい

「黄金の剣を持つものが
 この大陸を征する。」
「黄金の剣は四本
 それぞれの国にある。」

人々がホーライを知ったのは
国づくりにひと息ついた頃
それぞれの山より
ひときわ高い頂上が平らな山

ホーライ山の麓に行きたいと
それぞれの国民が思ったのも
自然なこと 当然なこと
「いにしえの記憶」の起源

地震のお陰で家屋は倒壊し
木材を求めて山へと分け入った
ハニポリの硬い大地には
同じく硬い樹木が生えていた

木を伐採するための斧は
ホーライ山を中心として
10万尋の円内では
すぐにボロボロに朽ち果てる

何度試みても結果は同じ
その内 怪我した者が偶然に
ヨードの効用を見つけ
人はホーライを保養の地とした

ヨードの不思議 自国に持ち帰り
試してみたが効果はなし
「10万尋の円内」が効果の範囲
ホーライは国境なき中立地帯

ホーライを訪れ治療を行った者
その全てに「いにしえの記憶」
断片的な歴史的光景が
脳裏に浮かぶようになった

その記憶に従いホーライに残り
治療に訪れる者を世話するポーター達
四つの民族 四つの髪の色
でも言葉は北の大陸の言葉

首の下は土に埋められて
お互いに見合わす四人の男
お互いに顔は知っていても
お互いに知らぬふり

ポーターが食事を
木製の匙でそれぞれの口へ
満腹の後の睡魔
四つの鼾 四つの寝言

【この後に四人の男の寝言】
赤髪・白髪・青髪・黒髪